医薬品情報管理業務のパラダイムシフト
2013年01月05日
パラダイムシフトの意味
※取材に備え、記事を「トーク調」で書き直してみました。
正直言うと、「パラダイムシフト（paradigm shift）」という言葉は、最近学会等でよく耳にするもんで、一度使ってみたかっただけなんです。
ただの「うれしがり」ですよね（笑）。
本当は「時代の常識を覆すような思想転換（はてなキーワードより）」なんて大それたことではなく、「これからは医薬品情報管理業務（以下「DI業務」）も変わらなくっちゃ！」程度の意味なんです。
そもそも今回の発表は、日頃より病院薬剤師が「おぼろげ」に感じている方向性というか、ニーズを代弁したものに過ぎません。
そして、それを一層鮮明にさせてくれたのが、平成24年度より新設された「病棟薬剤業務実施加算」だった訳です。
正直言うと、「パラダイムシフト（paradigm shift）」という言葉は、最近学会等でよく耳にするもんで、一度使ってみたかっただけなんです。
ただの「うれしがり」ですよね（笑）。
本当は「時代の常識を覆すような思想転換（はてなキーワードより）」なんて大それたことではなく、「これからは医薬品情報管理業務（以下「DI業務」）も変わらなくっちゃ！」程度の意味なんです。
そもそも今回の発表は、日頃より病院薬剤師が「おぼろげ」に感じている方向性というか、ニーズを代弁したものに過ぎません。
そして、それを一層鮮明にさせてくれたのが、平成24年度より新設された「病棟薬剤業務実施加算」だった訳です。
ＤＩ業務は誰の役割？
既にご存知の通り、病棟薬剤業務実施加算の新設を受けて日本病院薬剤師会（以下「日病薬」）より発出された「薬剤師の病棟業務の進め方（Ver.1.0）」では、医薬品の情報収集と医師への情報提供等は病棟専任薬剤師の業務として位置付けられました（下記参照）。
医薬品情報管理室（以下「ＤＩ室」）の薬剤師が従来担ってきたこれらの役割を、今後は病棟専任薬剤師が担えと言うのですから、これこそがパラダイムシフトですよね。
一見突拍子もないことのようにも思えますが、少し冷静に考えてみると、実に現実的かつ合理的な変革であることに気付かされます。
�� 医薬品の情報収集と医師への情報提供等
・医薬品情報の収集と提供、資料作成、処方設計等を行う。とりわけ、PMDAメディナビ(http://www.info.pmda.go.jp/)に登録して、最新の情報を収集する。
・医薬品情報管理室の薬剤師と連携をとり、当該病棟での問題点等の情報を共有するとともに、各病棟で業務を実施するにあたり必要な情報を収集する。
・当該病棟で使用される医薬品の安全性情報及び新薬、後発医薬品等に対する情報を医師等へ速やかに伝達する。
医薬品情報管理室（以下「ＤＩ室」）の薬剤師が従来担ってきたこれらの役割を、今後は病棟専任薬剤師が担えと言うのですから、これこそがパラダイムシフトですよね。
一見突拍子もないことのようにも思えますが、少し冷静に考えてみると、実に現実的かつ合理的な変革であることに気付かされます。
オーバーフロー状態！？
日病薬が示した変革の意図。
まずはＤＩ室の薬剤師の視点から検証してみましょう。
一口にＤＩ業務と言っても、その範囲は多岐に渡ります。
下記をご覧ください。
当院のＤＩ室でも、このうちの大部分を担っていますし、それ以外の業務（医薬品マスタのメンテナンスや院外処方せんの代行修正など）も行っています。
たった一人で！
ほとんどオーバーフロー状態です（笑）。
聞くところによれば、専従のＤＩ担当者数は、どの施設でも１〜２名がやっとで、５人も６人も配置しているようなところは、私の知る限りありません。
ならば「増員すれば？」という話になりますが、それほど単純な話でもない。
そんなに人を増やしたところで、さほどの効果は出ないことも、我々は同時に気付いているからです。
なぜなら、ごくごく基本的な情報は何とかなったとしても、現場で求められている情報は、現場にいないＤＩ室の薬剤師には知り得ないからです。
情報は「使われてなんぼ」。
闇雲に情報を収集しても、使われなければ何にもならない。
そういった意味では、常に現場にいる病棟薬剤師がＤＩ業務を行うことは、とても理にかなっている訳です。
まずはＤＩ室の薬剤師の視点から検証してみましょう。
一口にＤＩ業務と言っても、その範囲は多岐に渡ります。
下記をご覧ください。
日本病院薬剤師会が規定するＤＩ業務
1．医薬品情報の収集，整理，保管および情報の加工と専門的評価
2．医薬品に関する情報の伝達
3．医薬品に関する質疑に対する情報の提供
4．薬事委員会への参画
5．臨床薬剤業務の支援または必要に応じた兼務
6．副作用の収集および伝達体制における病院内での役割
7．治験審査委員会への資料の作成および提供
8．医薬品の市販後調査への関与
9．医薬関連分野の学生や従事者に対する教育
10．ＤＩ担当者養成のための教育と訓練
11．ＤＩ関連の情報科学に関する研究
12．医薬品，家庭用品および農薬等の中毒情報の収集と伝達
13．地域における病院間のＤＩ業務の連携
当院のＤＩ室でも、このうちの大部分を担っていますし、それ以外の業務（医薬品マスタのメンテナンスや院外処方せんの代行修正など）も行っています。
たった一人で！
ほとんどオーバーフロー状態です（笑）。
聞くところによれば、専従のＤＩ担当者数は、どの施設でも１〜２名がやっとで、５人も６人も配置しているようなところは、私の知る限りありません。
ならば「増員すれば？」という話になりますが、それほど単純な話でもない。
そんなに人を増やしたところで、さほどの効果は出ないことも、我々は同時に気付いているからです。
なぜなら、ごくごく基本的な情報は何とかなったとしても、現場で求められている情報は、現場にいないＤＩ室の薬剤師には知り得ないからです。
情報は「使われてなんぼ」。
闇雲に情報を収集しても、使われなければ何にもならない。
そういった意味では、常に現場にいる病棟薬剤師がＤＩ業務を行うことは、とても理にかなっている訳です。
担い手としての自覚
続いては病棟薬剤師の視点から。
当院では開院（平成17年3月）以来、全病棟フロア（７フロア）に薬剤師１名を常駐させ、薬剤管理指導、医薬品管理、医薬品適正使用など、様々な形でチーム医療を実践してきました。
そんな中、病棟薬剤師が日々対応している質疑応答の数はＤＩ室の比ではなく、トータルではＤＩ室の実に数十倍にものぼります。
何のことはない、「病棟薬剤師によるＤＩ業務」は、とっくの昔から実践されていることだったのです。
とはいえ、自らを「ＤＩ業務の担い手」と認識している病棟薬剤師は、そう多くはない筈。
なぜならば、病棟薬剤師に言わせると、現在ＤＩ業務（もどき）を行っているのは、いちいちＤＩ室に問い合わせたり赴いたりするのが大変だからで、「やむを得ず」行っているに過ぎないからです。
その辺をきちんと自覚してもらうのが、今回日病薬が意図したことだったと、私は思います。
当院では開院（平成17年3月）以来、全病棟フロア（７フロア）に薬剤師１名を常駐させ、薬剤管理指導、医薬品管理、医薬品適正使用など、様々な形でチーム医療を実践してきました。
そんな中、病棟薬剤師が日々対応している質疑応答の数はＤＩ室の比ではなく、トータルではＤＩ室の実に数十倍にものぼります。
何のことはない、「病棟薬剤師によるＤＩ業務」は、とっくの昔から実践されていることだったのです。
とはいえ、自らを「ＤＩ業務の担い手」と認識している病棟薬剤師は、そう多くはない筈。
なぜならば、病棟薬剤師に言わせると、現在ＤＩ業務（もどき）を行っているのは、いちいちＤＩ室に問い合わせたり赴いたりするのが大変だからで、「やむを得ず」行っているに過ぎないからです。
その辺をきちんと自覚してもらうのが、今回日病薬が意図したことだったと、私は思います。
３つの障壁
さて、病棟薬剤師には、ＤＩ業務を担っていくうえで避けては通れない、いわば「障壁」が３つ存在します。
「薬剤師の病棟業務の進め方（Ver.1.0）」によれば、病棟専任薬剤師には「休日等も対応ができる体制」が求められています。
現在のところは一応「努力目標」ですが、医療が24時間体制で行われていることを思えば、当然のことではあります。
しかし、ここで問題となってくるのが、一つ目の「時間的障壁」。
ＤＩ室がカバーできるのは、１週間のうちでたった1/4に過ぎません。
※１週間（24時間×7日＝168時間）のうち、ＤＩ室が稼動しているのは平日日勤帯（8時間×5日＝40時間）のみであり、稼働率は23.8％（＝40時間÷168時間×100）と計算される。
では残り3/4をどうやってカバーしようか、という話になってきます。
次の「物理的障壁」も切実です。
実は私は前の病院でもＤＩ担当だったんですが、ＤＩ室と言っても名ばかりで、調剤室とはドア一つ隔てただけの小部屋に過ぎませんでした。
ノック一つで、質問の電話はもちろん、薬剤鑑別や吸入指導の依頼への対応、はたまた調剤室がピンチの際には、監査要員として駆り出されることもしばしばで、意外と機能的だったことを覚えています。
しかし、うちのような大きな病院だとそうもいきません。
ＤＩ室の資料がいかに充実していようと、病棟薬剤師は、日に何度も病棟との間を往復する訳にはいかないからです。
最後の「技術的障壁」も悩ましい問題です。
病棟薬剤師の中にはＤＩ経験者もいますし、経験がなくとも上手に情報収集できる人はいるのですが、そうでない人も少なからず存在します。
そういったスキルのことを「情報リテラシー」と呼ぶそうなのですが、一朝一夕に習得できるものではないのです。
しかし、病棟薬剤師が「ＤＩ業務の担い手」たらなくてはならなくなった今、「自己流」での習熟を待っていられないのも事実です。
１．時間的障壁
２．物理的障壁
３．技術的障壁
「薬剤師の病棟業務の進め方（Ver.1.0）」によれば、病棟専任薬剤師には「休日等も対応ができる体制」が求められています。
現在のところは一応「努力目標」ですが、医療が24時間体制で行われていることを思えば、当然のことではあります。
しかし、ここで問題となってくるのが、一つ目の「時間的障壁」。
ＤＩ室がカバーできるのは、１週間のうちでたった1/4に過ぎません。
※１週間（24時間×7日＝168時間）のうち、ＤＩ室が稼動しているのは平日日勤帯（8時間×5日＝40時間）のみであり、稼働率は23.8％（＝40時間÷168時間×100）と計算される。
では残り3/4をどうやってカバーしようか、という話になってきます。
次の「物理的障壁」も切実です。
実は私は前の病院でもＤＩ担当だったんですが、ＤＩ室と言っても名ばかりで、調剤室とはドア一つ隔てただけの小部屋に過ぎませんでした。
ノック一つで、質問の電話はもちろん、薬剤鑑別や吸入指導の依頼への対応、はたまた調剤室がピンチの際には、監査要員として駆り出されることもしばしばで、意外と機能的だったことを覚えています。
しかし、うちのような大きな病院だとそうもいきません。
ＤＩ室の資料がいかに充実していようと、病棟薬剤師は、日に何度も病棟との間を往復する訳にはいかないからです。
最後の「技術的障壁」も悩ましい問題です。
病棟薬剤師の中にはＤＩ経験者もいますし、経験がなくとも上手に情報収集できる人はいるのですが、そうでない人も少なからず存在します。
そういったスキルのことを「情報リテラシー」と呼ぶそうなのですが、一朝一夕に習得できるものではないのです。
しかし、病棟薬剤師が「ＤＩ業務の担い手」たらなくてはならなくなった今、「自己流」での習熟を待っていられないのも事実です。
オンデマンド化とクラウド化
まずはインフラの活用です。
データウェアハウスや副作用・インシデント報告システムなどは、開院に合わせて用意されたシステムです。
幸いなことに、当院は院内ＬＡＮやイントラネットといったネットワーク・インフラに恵まれていましたので、これを使わない手はない、ということになりました。
更に嬉しいことには、近年では、接続および検索の速度、サーバの容量などがあまり問題にならなくなりました。
これならば、情報のオンデマンド化・クラウド化が実現できます。
具体的には、安全性情報や新製品情報など、比較的「鮮度の高い」情報は、即座にイントラネットにUPします。
これで、24時間いつでも情報にアクセス可能な状態（オンデマンド化）となり、ある程度ではありますが「時間的障壁」を克服できるようになります。
ＤＩ室で入手したそれ以外の情報に関しては、院内ＬＡＮを通じて、ＤＩ室のＰＣ内のファイルを院内のどこからでも参照できるようにしておきます。
病棟薬剤師は、わざわざＤＩ室に赴かなくても容易に資料を入手できる状態（クラウド化）となり、「物理的障壁」を克服できるようになります。
なお、今回便宜上「クラウド化」という言葉を使いましたが、近年進歩の著しいインターネット上のクラウドサービスの利用も、将来的には選択肢の一つです。
ただ、セキュリティやデータ保全の問題をクリアすることが条件ですが。
データウェアハウスや副作用・インシデント報告システムなどは、開院に合わせて用意されたシステムです。
幸いなことに、当院は院内ＬＡＮやイントラネットといったネットワーク・インフラに恵まれていましたので、これを使わない手はない、ということになりました。
更に嬉しいことには、近年では、接続および検索の速度、サーバの容量などがあまり問題にならなくなりました。
これならば、情報のオンデマンド化・クラウド化が実現できます。
具体的には、安全性情報や新製品情報など、比較的「鮮度の高い」情報は、即座にイントラネットにUPします。
これで、24時間いつでも情報にアクセス可能な状態（オンデマンド化）となり、ある程度ではありますが「時間的障壁」を克服できるようになります。
ＤＩ室で入手したそれ以外の情報に関しては、院内ＬＡＮを通じて、ＤＩ室のＰＣ内のファイルを院内のどこからでも参照できるようにしておきます。
病棟薬剤師は、わざわざＤＩ室に赴かなくても容易に資料を入手できる状態（クラウド化）となり、「物理的障壁」を克服できるようになります。
なお、今回便宜上「クラウド化」という言葉を使いましたが、近年進歩の著しいインターネット上のクラウドサービスの利用も、将来的には選択肢の一つです。
ただ、セキュリティやデータ保全の問題をクリアすることが条件ですが。
コンテンツの充実化
次は情報の共有・一元化です。
当院の仕組みとしては、まず毎日の朝礼が挙げられます。
ここで日勤と深夜明けのスタッフには情報が伝わりますし、不在のスタッフには後日「引継ぎノート」を見てもらう訳です。
超アナログですが（笑）、開院以来大切にしている「しきたり」です。
あと現在進行中なのが、紙媒体の資料の電子化。
俗に言う「自炊」という奴です。
ＤＩ室でこれまで収集・蓄積されてきた紙媒体の資料は、先に述べた「物理的障壁」の影響もあって、今後ますます再利用されずに死蔵されていく運命にあります。
これらを高速スキャナでＰＤＦ化しておけば、院内ＬＡＮを通じてどこからでも資料を参照できるようになりますし、スペースも空きます。
更にＯＣＲ処理までしておけば、検索も可能になるので完璧ですね。
病棟薬剤師にも協力を求めます。
これも先に述べたことですが、病棟薬剤師が日々収集する情報は、ＤＩ室が収集するそれと比べて、はるかに実用的である筈です。
ならば、今後はそれらを「使い捨て」にするのではなく、「共有財産」として大切に取り扱ってもらう訳です。
（どのような形式でもよいので）収集した情報は必ずＰＣに残す。
各自がこれさえ実践してくれれば、あとは各病棟フロアのＰＣに保存されたデータを、定期的にＤＩ室のＰＣ（外付けＨＤＤ）にバックアップするだけで、これまた院内ＬＡＮの威力で「クラウド化」の完成です。
岐阜大学医学部附属病院が開発された「G.P.I.S.」のような統合システムにはとても及びませんが、近頃ではＰＣの基礎体力（!?）も上がってきているので、それに近いことならば可能なんですよね。
とにかく、インフラが整備されたら、あとはアイデアを駆使して「コンテンツの充実化」に全力投球するのみです。
当院の仕組みとしては、まず毎日の朝礼が挙げられます。
ここで日勤と深夜明けのスタッフには情報が伝わりますし、不在のスタッフには後日「引継ぎノート」を見てもらう訳です。
超アナログですが（笑）、開院以来大切にしている「しきたり」です。
あと現在進行中なのが、紙媒体の資料の電子化。
俗に言う「自炊」という奴です。
ＤＩ室でこれまで収集・蓄積されてきた紙媒体の資料は、先に述べた「物理的障壁」の影響もあって、今後ますます再利用されずに死蔵されていく運命にあります。
これらを高速スキャナでＰＤＦ化しておけば、院内ＬＡＮを通じてどこからでも資料を参照できるようになりますし、スペースも空きます。
更にＯＣＲ処理までしておけば、検索も可能になるので完璧ですね。
病棟薬剤師にも協力を求めます。
これも先に述べたことですが、病棟薬剤師が日々収集する情報は、ＤＩ室が収集するそれと比べて、はるかに実用的である筈です。
ならば、今後はそれらを「使い捨て」にするのではなく、「共有財産」として大切に取り扱ってもらう訳です。
（どのような形式でもよいので）収集した情報は必ずＰＣに残す。
各自がこれさえ実践してくれれば、あとは各病棟フロアのＰＣに保存されたデータを、定期的にＤＩ室のＰＣ（外付けＨＤＤ）にバックアップするだけで、これまた院内ＬＡＮの威力で「クラウド化」の完成です。
岐阜大学医学部附属病院が開発された「G.P.I.S.」のような統合システムにはとても及びませんが、近頃ではＰＣの基礎体力（!?）も上がってきているので、それに近いことならば可能なんですよね。
とにかく、インフラが整備されたら、あとはアイデアを駆使して「コンテンツの充実化」に全力投球するのみです。
ＤＩ室依存からの脱皮
最後は情報リテラシーの普及です。
どんなにインフラやコンテンツを整備しても、個々の薬剤師がそれを十分に活用できなければ「宝の持ち腐れ」となってしまいます。
病棟薬剤業務を実践するためには、病棟薬剤師もＤＩ室の薬剤師と同等の情報リテラシーを習得し、院内のデータベースやインターネットを自由自在に使いこなさなくてはなりません。
ＤＩ室に依存した情報収集からは、早く脱皮する必要があります。
では、情報リテラシーを習得するにはどうすればいいのでしょう？
ケーススタディなどの勉強会も参考になるとは思いますが、まずは実践、やってみることこそが、上達への早道です。
あと、オンデマンド化・クラウド化を提唱しておきながら、とても逆説的なことを言いますが、病棟薬剤師がＤＩ室に赴いて情報収集することも、意外と効果的なのではと思います。
情報収集する環境は、病棟よりもＤＩ室の方がまだまだ歩があります。
ＤＩ室にいても病棟薬剤業務実施加算の算定は可能ですし、その際、ＤＩ室の薬剤師からの助言を受けられるメリットも見込めるからです。
どんなにインフラやコンテンツを整備しても、個々の薬剤師がそれを十分に活用できなければ「宝の持ち腐れ」となってしまいます。
病棟薬剤業務を実践するためには、病棟薬剤師もＤＩ室の薬剤師と同等の情報リテラシーを習得し、院内のデータベースやインターネットを自由自在に使いこなさなくてはなりません。
ＤＩ室に依存した情報収集からは、早く脱皮する必要があります。
では、情報リテラシーを習得するにはどうすればいいのでしょう？
ケーススタディなどの勉強会も参考になるとは思いますが、まずは実践、やってみることこそが、上達への早道です。
あと、オンデマンド化・クラウド化を提唱しておきながら、とても逆説的なことを言いますが、病棟薬剤師がＤＩ室に赴いて情報収集することも、意外と効果的なのではと思います。
情報収集する環境は、病棟よりもＤＩ室の方がまだまだ歩があります。
ＤＩ室にいても病棟薬剤業務実施加算の算定は可能ですし、その際、ＤＩ室の薬剤師からの助言を受けられるメリットも見込めるからです。
「健全」な連携を
少し話がそれますが、今回のことを考えていく過程で、私の中で次のような「葛藤」が生じました。
ＤＩの専門家なのに、ＤＩ業務を手放してよいのか？
確かに、矛盾したことをやっているようにも思えます。
でも、やはりそうではありません。
現場にいる薬剤師こそが、最も必要な情報を集められる。
現場にいる薬剤師こそが、最も的確な情報を伝えられる。
「ＤＩ業務の担い手」の最前線は、何といっても病棟薬剤師なのです。
･･･更に余談ですが、似たようなことは「チーム医療」でも言えます。
現場にいる薬剤師こそが、最も感染制御を実践できる。
現場にいる薬剤師こそが、最も栄養アセスメントを実践できる。
最前線たる病棟薬剤師と専門家たる薬剤師の「健全」な連携こそが、今求められているのです。
ＤＩの専門家なのに、ＤＩ業務を手放してよいのか？
確かに、矛盾したことをやっているようにも思えます。
でも、やはりそうではありません。
現場にいる薬剤師こそが、最も必要な情報を集められる。
現場にいる薬剤師こそが、最も的確な情報を伝えられる。
「ＤＩ業務の担い手」の最前線は、何といっても病棟薬剤師なのです。
･･･更に余談ですが、似たようなことは「チーム医療」でも言えます。
現場にいる薬剤師こそが、最も感染制御を実践できる。
現場にいる薬剤師こそが、最も栄養アセスメントを実践できる。
最前線たる病棟薬剤師と専門家たる薬剤師の「健全」な連携こそが、今求められているのです。
ＤＩ室の新たな役割
１〜３の見直しが完了したからといって、ＤＩ室の業務がなくなる訳ではありません（ましてや疑義照会・マスタメンテ・実務実習といった、狭義のＤＩ業務以外の業務は増える一方ですし･･･）。
最後に、ＤＩ室の今後のあり方、特にＤＩ業務の大部分を病棟薬剤師に移譲した後の、新たな役割について述べてみたいと思います。
まずは「マネージャーとしての役割」ですが、一体何をマネジメントするというのでしょうか？
これまで述べてきたように、「インフラ」「コンテンツ」「情報リテラシー」は病棟薬剤業務を実践するために不可欠な要件です。
しかし、これらは同時に陳腐化・老朽化しやすくもあるのです。
これらのマネジメントは、ＤＩ室の薬剤師にしかできないことです。
次に「専門家としての役割」。
ＤＩ室の薬剤師は、医薬品情報管理業務のプロフェッショナルとして、更なる進化を目指していかねばなりません。
具体的には、薬物動態学・疫学・外国語などの知識を高め、より専門的な情報の評価・加工ができる体制を目指していく訳です。
こういったことは、従来ならば大学病院しかできなかったことですが、今後は病棟薬剤業務のおかげで、それ以外の医療施設でも取り組みやすくなる筈です。
ここまで計算されていたとすれば凄いことです。
最後の「キーパーソンとしての役割」。
2011年度より医薬品情報専門薬剤師認定制度が創設されました。
医薬品情報専門薬剤師は、安全性情報が出された際に、その内容を勘案した措置・対策を提言するなど、院内での情報活用と対策立案に中心的機能を果たすことのできるキーパーソンとして期待されています。
まずは、このような人材を育成することからスタートです。
このように、病棟薬剤師だけでなく、ＤＩ室の薬剤師もまた、パラダイムシフトが求められているのです（了）。
最後に、ＤＩ室の今後のあり方、特にＤＩ業務の大部分を病棟薬剤師に移譲した後の、新たな役割について述べてみたいと思います。
１．マネージャーとしての役割
２．専門家としての役割
３．キーパーソンとしての役割
まずは「マネージャーとしての役割」ですが、一体何をマネジメントするというのでしょうか？
これまで述べてきたように、「インフラ」「コンテンツ」「情報リテラシー」は病棟薬剤業務を実践するために不可欠な要件です。
しかし、これらは同時に陳腐化・老朽化しやすくもあるのです。
・インフラ全体を俯瞰して、時代に合った枠組みを整備すること
・データベースの妥当性・正確性を評価し、更新・削除すること
・最新の情報をもとに、スタッフの情報リテラシーを養成すること
これらのマネジメントは、ＤＩ室の薬剤師にしかできないことです。
次に「専門家としての役割」。
ＤＩ室の薬剤師は、医薬品情報管理業務のプロフェッショナルとして、更なる進化を目指していかねばなりません。
具体的には、薬物動態学・疫学・外国語などの知識を高め、より専門的な情報の評価・加工ができる体制を目指していく訳です。
こういったことは、従来ならば大学病院しかできなかったことですが、今後は病棟薬剤業務のおかげで、それ以外の医療施設でも取り組みやすくなる筈です。
ここまで計算されていたとすれば凄いことです。
最後の「キーパーソンとしての役割」。
2011年度より医薬品情報専門薬剤師認定制度が創設されました。
医薬品情報専門薬剤師は、安全性情報が出された際に、その内容を勘案した措置・対策を提言するなど、院内での情報活用と対策立案に中心的機能を果たすことのできるキーパーソンとして期待されています。
まずは、このような人材を育成することからスタートです。
このように、病棟薬剤師だけでなく、ＤＩ室の薬剤師もまた、パラダイムシフトが求められているのです（了）。
2012年09月22日
医薬品情報管理業務のパラダイムシフト
平成22年付の医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」を受け、本年度より病棟薬剤業務実施加算が新設された。
その後日本病院薬剤師会より発出された「薬剤師の病棟業務の進め方（Ver.1.0）」では、医薬品の情報収集と医師への情報提供等は病棟専任薬剤師の業務として位置付けられており、医薬品情報管理室（ＤＩ室）に依存した従来の発想からの転換（パラダイムシフト）が必要となっている。
それでは我々は、医薬品情報管理業務（ＤＩ業務）を今後どのように見直し、病棟薬剤業務に向けた体制作りを行うべきなのだろうか？
だまさんが考えるポイントは、下記の３つ。
それぞれについて考察していこう。
その後日本病院薬剤師会より発出された「薬剤師の病棟業務の進め方（Ver.1.0）」では、医薬品の情報収集と医師への情報提供等は病棟専任薬剤師の業務として位置付けられており、医薬品情報管理室（ＤＩ室）に依存した従来の発想からの転換（パラダイムシフト）が必要となっている。
それでは我々は、医薬品情報管理業務（ＤＩ業務）を今後どのように見直し、病棟薬剤業務に向けた体制作りを行うべきなのだろうか？
だまさんが考えるポイントは、下記の３つ。
１．インフラの活用
２．情報の共有・一元化
３．情報リテラシーの普及
それぞれについて考察していこう。
１．インフラの活用 〜物理的障壁と時間的障壁の克服〜
ＤＩ室の薬剤師とそれ以外の薬剤師との間には２つの障壁がある。
一つめは「物理的障壁」。
規模が大きい施設であればあるほど、ＤＩ室と病棟の距離は遠い傾向にあり、医薬品の情報収集のうえでの障壁となり得る。
電話やＰＨＳによる口頭伝達にはおのずと限界がある。
かといって、病棟とＤＩ室との間を病棟薬剤師が１日に何度も往復することは、時間の面でも労力の面でも現実的ではないからだ。
病棟薬剤師がＤＩ室に赴くことは最小限にとどめ、日常必要とされる情報は病棟において収集できなくては困る（病棟以外の部署も然り）。
そこで、「情報のクラウド化（どこでも化）」が必要となる。
二つめは「時間的障壁」。
実は、ＤＩ室の稼働時間は１週間の中では1/4にも満たない。
※１週間（24時間×7日＝168時間）のうち、ＤＩ室が稼動しているのは平日日勤帯（8時間×5日＝40時間）のみであり、稼働率は23.8％（40時間÷168時間×100＝23.8％）となる。
言うまでもなく、医療は24時間体制で行われている。
ＤＩ室が稼動していない時間帯であっても、可能な限りの情報収集は可能でなくてはならない。
そこで、「情報のオンデマンド化（いつでも化）」が必要となる。
では、情報のクラウド化・オンデマンド化を図り、物理的・時間的障壁を克服するためには、具体的にどうすればよいのだろうか？
既に施設内に院内ＬＡＮやイントラネットといったネットワーク・インフラがあるのならば、まずはその活用を検討すべきだろう。
幸いなことに、近年では接続および検索速度・サーバの容量などが問題となることは減った。
将来的な選択肢として、近年進歩の著しいインターネット上のクラウドサービスを利用する方法も考えられるが、セキュリティやデータ保全の問題をクリアする必要がある。
一つめは「物理的障壁」。
規模が大きい施設であればあるほど、ＤＩ室と病棟の距離は遠い傾向にあり、医薬品の情報収集のうえでの障壁となり得る。
電話やＰＨＳによる口頭伝達にはおのずと限界がある。
かといって、病棟とＤＩ室との間を病棟薬剤師が１日に何度も往復することは、時間の面でも労力の面でも現実的ではないからだ。
病棟薬剤師がＤＩ室に赴くことは最小限にとどめ、日常必要とされる情報は病棟において収集できなくては困る（病棟以外の部署も然り）。
そこで、「情報のクラウド化（どこでも化）」が必要となる。
二つめは「時間的障壁」。
実は、ＤＩ室の稼働時間は１週間の中では1/4にも満たない。
※１週間（24時間×7日＝168時間）のうち、ＤＩ室が稼動しているのは平日日勤帯（8時間×5日＝40時間）のみであり、稼働率は23.8％（40時間÷168時間×100＝23.8％）となる。
言うまでもなく、医療は24時間体制で行われている。
ＤＩ室が稼動していない時間帯であっても、可能な限りの情報収集は可能でなくてはならない。
そこで、「情報のオンデマンド化（いつでも化）」が必要となる。
では、情報のクラウド化・オンデマンド化を図り、物理的・時間的障壁を克服するためには、具体的にどうすればよいのだろうか？
既に施設内に院内ＬＡＮやイントラネットといったネットワーク・インフラがあるのならば、まずはその活用を検討すべきだろう。
幸いなことに、近年では接続および検索速度・サーバの容量などが問題となることは減った。
将来的な選択肢として、近年進歩の著しいインターネット上のクラウドサービスを利用する方法も考えられるが、セキュリティやデータ保全の問題をクリアする必要がある。
２．情報の共有・一元化 〜コンテンツの充実〜
先述した物理的・時間的障壁は、何も今に始まったことではない。
現に病棟薬剤師は、それらの障壁を承知のうえで、収集可能な情報は自力で収集しているのだ。
しかし、恐らく彼らの中に、「自分たちはＤＩ活動をしている」「自分たちはＤＩ担当者だ」という自覚は乏しいに違いない。
なぜなら、病棟薬剤師は、いちいちＤＩ室に問い合わせたり赴いたりするのが大変だからという理由で、やむを得ず行っているに過ぎないからだ。
そこに発想の転換（パラダイムシフト）の必要性がある。
先述の通り、「医薬品の情報収集は病棟薬剤師の業務である」と明確に位置付けられたのだから。
病棟薬剤師が今後担うべき役割は、情報の共有・一元化への協力だ。
病棟薬剤師が日々収集している情報は、ＤＩ室の薬剤師が闇雲に収集するそれと比べて、はるかに実用的である違いない。
なぜならば、彼らはそれらの情報を必要に迫られて収集しているからだ。
しかし、今後はそれらを自らの便益にのみ使用するのではなく、その実用的価値を十分認識したうえで、「共有財産」として取り扱うべきなのだ。
これとは別に取り組むべきことがもう一つある。
それは、書籍も含めた紙媒体の資料の電子化だ。
これまで収集・蓄積されてきた紙媒体の資料は、先に述べた物理的障壁の影響もあり、再利用されずに死蔵されていく傾向にある。
紙媒体の資料の電子化が実現すれば、コンテンツは格段に充実する。
また、近年では、高速スキャナやスキャン代行サービスにより電子化は容易となっており、これを利用しない手はない。
現に病棟薬剤師は、それらの障壁を承知のうえで、収集可能な情報は自力で収集しているのだ。
しかし、恐らく彼らの中に、「自分たちはＤＩ活動をしている」「自分たちはＤＩ担当者だ」という自覚は乏しいに違いない。
なぜなら、病棟薬剤師は、いちいちＤＩ室に問い合わせたり赴いたりするのが大変だからという理由で、やむを得ず行っているに過ぎないからだ。
そこに発想の転換（パラダイムシフト）の必要性がある。
先述の通り、「医薬品の情報収集は病棟薬剤師の業務である」と明確に位置付けられたのだから。
病棟薬剤師が今後担うべき役割は、情報の共有・一元化への協力だ。
病棟薬剤師が日々収集している情報は、ＤＩ室の薬剤師が闇雲に収集するそれと比べて、はるかに実用的である違いない。
なぜならば、彼らはそれらの情報を必要に迫られて収集しているからだ。
しかし、今後はそれらを自らの便益にのみ使用するのではなく、その実用的価値を十分認識したうえで、「共有財産」として取り扱うべきなのだ。
これとは別に取り組むべきことがもう一つある。
それは、書籍も含めた紙媒体の資料の電子化だ。
これまで収集・蓄積されてきた紙媒体の資料は、先に述べた物理的障壁の影響もあり、再利用されずに死蔵されていく傾向にある。
紙媒体の資料の電子化が実現すれば、コンテンツは格段に充実する。
また、近年では、高速スキャナやスキャン代行サービスにより電子化は容易となっており、これを利用しない手はない。
３．情報リテラシーの普及 〜ＤＩ室依存からの脱皮〜
どんなにインフラやコンテンツを整備しても、個々の薬剤師がそれを十分に活用できなければ意味がない。
そこで必要となるのが「情報リテラシー」だ。
情報リテラシー（information literacy）とは、情報化社会でコンピューターなど情報関連技術を習得し、積極的に情報を活用することのできる能力のこと（大辞林より）。
病棟薬剤業務を実践するためには、病棟薬剤師もＤＩ室の薬剤師と同等の情報リテラシーを習得し、院内のデータベースやインターネットを自由自在に使いこなせなくてはならない。
つまり、ＤＩ室に依存した情報収集のあり方から脱皮する訳だ。
では、情報リテラシーを習得するにはどうすればいいだろうか？
とにかく実践（やってみること）が必須条件だが、ケーススタディなどの講習がその手本となろう。
もう一つは、逆説的だが、病棟薬剤師がＤＩ室で情報収集することだ。
ＤＩ室で情報収集しても、病棟薬剤業務実施加算の算定は可能であり、その際、ＤＩ室の薬剤師からの助言を受けられる点がメリットとなる。
そこで必要となるのが「情報リテラシー」だ。
情報リテラシー（information literacy）とは、情報化社会でコンピューターなど情報関連技術を習得し、積極的に情報を活用することのできる能力のこと（大辞林より）。
病棟薬剤業務を実践するためには、病棟薬剤師もＤＩ室の薬剤師と同等の情報リテラシーを習得し、院内のデータベースやインターネットを自由自在に使いこなせなくてはならない。
つまり、ＤＩ室に依存した情報収集のあり方から脱皮する訳だ。
では、情報リテラシーを習得するにはどうすればいいだろうか？
とにかく実践（やってみること）が必須条件だが、ケーススタディなどの講習がその手本となろう。
もう一つは、逆説的だが、病棟薬剤師がＤＩ室で情報収集することだ。
ＤＩ室で情報収集しても、病棟薬剤業務実施加算の算定は可能であり、その際、ＤＩ室の薬剤師からの助言を受けられる点がメリットとなる。
ＤＩ室の今後のあり方
１〜３を達成したからといって、ＤＩ室の業務がなくなる訳ではもちろんない（ましてや疑義照会・マスタメンテ・実務実習といった、（狭義の）ＤＩ業務以外の業務は増える一方だ･･･）。
ここでは、ＤＩ室の今後のあり方、特にその大部分を病棟薬剤師に移譲した後のＤＩ業務の進め方について述べてみたい。
１）インフラ・コンテンツ・リテラシーのマネジメント
これまで述べてきたように、「インフラの活用」「コンテンツの充実」「情報リテラシーの普及」は病棟薬剤業務を実践するために不可欠な要件だ。
しかし、これらは同時に陳腐化・老朽化しやすい要素でもある。
これらのマネジメントは、ＤＩ室の薬剤師にしかできないことだ。
２）情報の専門的評価の追求
ＤＩ室の薬剤師は、医薬品情報管理業務のプロフェッショナルとして、更なる進化を目指していかねばならない。
具体的には、薬物動態学・疫学・外国語などの知識を高め、より専門的な情報の評価・加工ができる体制を追求する。
３）医薬品情報専門薬剤師の育成
安全性情報が出された際に、その内容を勘案した措置・対策を提言するなど、院内での情報活用と対策立案に中心的機能を果たすことのできるキーパーソンたる薬剤師の育成を目指す。
このように、ＤＩ室の薬剤師もまた、パラダイムシフトが求められているのだ（了）。
ここでは、ＤＩ室の今後のあり方、特にその大部分を病棟薬剤師に移譲した後のＤＩ業務の進め方について述べてみたい。
１）インフラ・コンテンツ・リテラシーのマネジメント
これまで述べてきたように、「インフラの活用」「コンテンツの充実」「情報リテラシーの普及」は病棟薬剤業務を実践するために不可欠な要件だ。
しかし、これらは同時に陳腐化・老朽化しやすい要素でもある。
・インフラ全体を俯瞰して、時代に合った枠組みを整備すること
・データベースの妥当性・正確性を評価し、更新・削除すること
・最新の情報をもとに、スタッフの情報リテラシーを養成すること
これらのマネジメントは、ＤＩ室の薬剤師にしかできないことだ。
２）情報の専門的評価の追求
ＤＩ室の薬剤師は、医薬品情報管理業務のプロフェッショナルとして、更なる進化を目指していかねばならない。
具体的には、薬物動態学・疫学・外国語などの知識を高め、より専門的な情報の評価・加工ができる体制を追求する。
３）医薬品情報専門薬剤師の育成
安全性情報が出された際に、その内容を勘案した措置・対策を提言するなど、院内での情報活用と対策立案に中心的機能を果たすことのできるキーパーソンたる薬剤師の育成を目指す。
このように、ＤＩ室の薬剤師もまた、パラダイムシフトが求められているのだ（了）。
